マウンテンバイクは元々砂利道やダートなどオフロードを走るための自転車です。
本来舗装路の長距離サイクリングには向かない自転車ですが、あえてマウンテンバイクをロングライドに使用するのにはどういったメリットがあるのでしょうか?
今回は不条理に見えて合理的なマウンテンバイクのロングライド仕様を掘り下げていきます。

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MTB、かっこいいけど乗りにくい?

マウンテンバイク かっこいい

マウンテンバイクは、サスペンションなどメカニカルな見た目や、洗練された機能美が男子の憧れをそそる自転車ですよね。
筆者も、小学生のころ友人が乗っているマウンテンバイクが異様にうらやましかった思い出があります。
ショップ勤めしていた頃も、よくお客さんがスポーツ自転車デビューにマウンテンバイクを買おうとして、止めた経験があります。

オフロード、走りますか?

マウンテンバイクのメカニカルな見た目は、もともとオフロードを走るためのもので、段差から降りる衝撃を受け止めるためのサスペンションや、悪路への食い付きを重視した太いブロックタイヤが特徴的です。

言い返せばオフロード専用機なので、オフロードを外れれば足かせにもなりえます。
実際、マウンテンバイクを検討しているお客さんに、「オフロードコース走りますか?」と聞いてみると、たいていの方がNOでした。
そうなると断然クロスバイク、ないしロードバイクのほうがメリットが大きくなり、それを説明するとたいていのお客さんはクロスバイクを購入していきました。

自転車には適材適所メリットが生きるシチュエーションがあり、そのシチュエーションから離れればそのメリットはたちまちデメリットになりえます。
もうすでに一目ぼれでマウンテンバイクを買ってしまったけど、オフロードを走らないという方はそれを肌身で感じていますよね。

 

じゃあなんでMTBでロングライド?

マウンテンバイク 長距離 ロングライド

いきなり今回のコンセプトを否定してしまいましたが、これはあくまで一般論です。
実際、ロングライドにマウンテンバイクを選ぶにはデメリットを差し引いて余りあるメリットがあります。
そのメリットは、長所を伸ばすという物を扱うときの根幹的な考え方で導き出すことができます。

MTBのメリットは?

ご説明したとおり、マウンテンバイクは本来オフロードを走るためのもので、そのために設計されています。

サスペンションは衝撃を吸収するため。

太いフレームは衝撃に負けないため。

大きく太いブロックタイヤは悪路にも食いつき、異物にも負けないため。

悪路でもトラブルフリーな機械部品(コンポーネント)。

すべて険しいオフロードを走るためのもので、舗装路では重いサスペンションとフレームは重石になり、大きくて太いブロックタイヤはきれいな路面の抵抗になります。
こう聞くと、ロングライドなんてもってのほかに思えて当然ですし、元々舗装路を走るために設計されたロードバイクやクロスバイクに敵うはずがないように思えます。

 

ロングライドにどう当てはまるの?

では、あえて長距離を走るロングライドにその特性を当てはめて考えてみましょう。

舗装路では、たしかに重いサスペンションやフレームは足かせです。
しかし、ロングライドの道中舗装が悪い道があれば、サスペンションも生きてきますし、頑丈なフレームは安心感につながります。
「この道を走れればもっと自転車で行ける行動範囲が広がるのに」という場合にも、大きなメリットになるでしょう。

タイヤに関しても、舗装の悪い道に大きなメリットです。
太くエアボリュームが多ければ小さな段差の衝撃はタイヤで吸収できますし、分厚いゴムはパンク対策になるので、より長距離を走りたい場合のメリットになります。
そもそもタイヤは簡単に安く変更できるので、スリック系のタイヤに交換すればブロックタイヤのデメリットも打ち消せます。

もはやマウンテンバイクの標準装備になっているディスクブレーキも大きなメリットです。
長距離を走るということは、天候不順に見舞われる可能性も高く、ディスクブレーキは大きなメリットです。
汚れなどに強いコンポ類も、長距離走るときのトラブルを予防できるでしょう。

比較的ロードバイクやクロスバイクよりも荷物を積載する能力に長けているので、泊りがけのサイクリングなどにももってこいです。

単純に長距離を走るというポイントから考えれば、デメリットに見える設計もこれだけメリットになります。
実際、マウンテンバイク先進国の欧米では、アドベンチャーライドといえばマウンテンバイクで、ロードバイクよりも利用シーンが多いです。
これらのメリットは、ロードバイクはもちろんクロスバイクにもないものです。

打ち消せないデメリットも

ただし、どうしても打ち消せないデメリットもあります。
それは、圧倒的に高速走行には向かないというデメリットです。

ロードバイクは、前傾姿勢で空気抵抗を抑え、脚力だけでなく体幹まで使えるポジションになっています。
一方マウンテンバイクは、視界を広く、バランスが取りやすいようかなり上体が起きたポジションになっています。
また、太いタイヤは重く抵抗になるので、スピードを競えばロードバイクには勝てません。

スピードを出せないということは、同じ距離を走っても時間がかかり、制限時間の問題で活動範囲が限定されるというデメリットがあります。

また、重い自転車は軽い自転車に比べて疲れやすいです。
重さは特に坂道での足かせになるので、アップダウンの激しいルートでは、軽いギアでゆっくり走るか、むしろ降りたほうが楽かもしれません。

つまり、ロングライドを幅を広げ、快適に走れるメリットはあれど、スピードを出すのには向かないのがマウンテンバイクの特性だということですね。
比較的まったりと、スピードを出さずに走るロングライドであればマウンテンバイクにもメリットがありますし、とくに泊りがけでより長距離走る場合には、もしかするとロードバイクよりも快適かもしれません。

 

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ロングライド用MTBのカスタマイズ

自転車 工具

ここまで読んでも「マウンテンバイクをロングライドに使いたい!」と思っていただけた方は、ぜひカスタマイズに挑戦してみましょう。
紹介したとおり、タイヤの交換は簡単にできるカスタマイズですが、そのほかの部品も交換すればもっともっとロングライド向きのマウンテンバイクを作り上げることができます。
マウンテンバイクをオンロード化する三種の神器を紹介します。
カスタマイズする分どんどんオフロードを走れなくなっていくので、オフロード走行も楽しみたい方はバランスを考えてカスタマイズしていってくださいね。

ハンドル

マウンテンバイクには、操作しやすいフラットハンドルが装備されています。
フラットハンドルでロングライドができないわけではないのですが、握れる場所が限られるので腕の疲労につながります。

おすすめなのはブルホーンバーで、進行方向に折れ曲がったハンドルです。
通常走行ではフラット部分を持ち、疲れたり、すこし空気抵抗を抑えたい場合はフロント部分を握る選択肢が生まれます。
ロードバイクにも使われているドロップハンドルも有効ですが、コンポーネントを刷新しなければいけないので、コンポを流用できるブルホーンバーにメリットがあります。

サスペンション

マウンテンバイクの特徴でもありますが、これは基本的にロングライドでは必要ありません。
極端なでこぼこ道を走るわけでもなければ、いっそ取ってしまいましょう。

ダンパーを組み込んだサスペンションフォークに対して、サスペンションがないリジットフォークがあります。
もちろんマウンテンバイク用もあり、だいたい1万円~販売されています。
交換は素人では難しいですし、オフロードは走れなくなってしまいますが、完全にオンロード用にしてしまうならその価値は十分にあります。
マウンテンバイクを買ったけど、クロスバイクにすればよかったという方にはぜひおすすめします。

タイヤ

紹介したとおり、マウンテンバイクにもロードバイクのようなスリックタイヤがあり、オンロードでは大きなメリットです。
スリックタイヤに溝を掘ったシティタイヤなどもあるので、好みで使い分けるといいでしょう。

あとは太さも大きく影響してきます。
細くすればするだけオンロードでは有利ですが、クッション性は落ちます。
また、もともと太いタイヤ用のホイールでは細くする限界があるので要注意です。
初めての場合はお店で相談するといいですね。

 

ロングライド用におすすめのMTB

自転車屋 ショップ

はじめからロングライド用にマウンテンバイクを買うのは、クロスバイクやロードバイクとよく比べてみる必要がありますが、それでもやっぱりマウンテンバイクがいいという方のために、ロングライド用としてもおすすめのマウンテンバイクをピックアップしてみました。

GIANT ATX

私のアドベンチャーライドの相棒でもあるGIANTのマウンテンバイクです。
もともと何の考えもなしに「かっこいい!安い!」という理由で購入したのですが、フレームの剛性、弾性もちょうどよく、カスタマイズの幅も広く気に入っています。
コンポもほぼSHIMANOのグループセットですし、機械式ディスクブレーキも装備されています。
私の購入した型式と違い、現行型ではブレーキワイヤーがフレームインナーなのもいいですね。
価格も税抜き54,000円と高コスパを維持しています。

 

MERIDA BIG.NINE 20-MD

マウンテンバイクといえば29erでしょ!という方におすすめなのがメリダのBIG.NINEです。
その名のとおり29インチタイヤ標準装備で、スリックにすればその走り心地はかなりクロスバイクに近くなります。
ワイヤーが露出しているなどATXより劣る部分もありますが大きな問題ではないですし、コンポももちろん悪くありません。
価格は65,900円とコスパも十分。
14.4kgの参考重量もこの価格にしては優秀で、もし今度買い換えるなら第一候補とも言える魅力的なモデルです。

 

Cannondale Trail6

安く買うならアルミ、アルミといえばCannondaleというわけでキャノンデールのMTB。
これ古い型を友人が乗っているんですが、カスタマイズすればなかなかの乗り心地で優秀なモデルです。
友人のモデルからはかなり変わりましたが、フレームがかなりアップライドになっている印象です。
しかも価格変更なしでホイールが27.5インチと29erで選べるのがうれしいです。フレームも共通なのかな?
価格は税別59,000円となかなかのコスパです。
MTB先進国アメリカの本気のMTBを体感したいならはずせない注目モデルです。

 

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まとめ

マウンテンバイクは紛れもなくオフロード用自転車ですが、ロングライドにおいてもさまざまなメリットがあります。
スピードこそかないませんが、それ以外ではロードバイクを凌駕するメリットが数々あります。
カスタマイズすることでそのメリットを伸ばし、デメリットを打ち消せばよりよいロングライドの相棒になるでしょう。
新しくマウンテンバイクをロングライド用に購入するなら、紹介したモデルを含めハードテイルモデルがおすすめです。
これからスポーツ自転車を始めようとしている方も、すでにマウンテンバイクを買ってしまって後悔している方も、マウンテンバイクの新しい使い方で生かしてあげてみてもいいかもしれませんね。